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The Practice
ザ・プラクティス
The Practice


 20世紀最後にして最大のテレビ作家といっても過言でもない ディヴィッド E.ケリー の送る法廷ドラマシリーズ。元弁護士であり L.A.ロー、ピケットフェンスといった作品に携わってきたケリーが描き出す、ダーク&シリアスでスピード感のある法廷シーンは絶品のひとこと。ほぼ同時期にスタートし同じボストンを舞台とする アリーマクビール(myラブ)とは、その表現方法やシチュエーションで対を成す、双子の作品であると言える。
基礎情報は snbpra01.html
感想ファイル2は snbpra03.html



4th Season Impression
第4シーズン ファーストインプレッション

 個人的に信じられない話だが、このシリーズ既に第4シーズン(1999-2000)である。ニュージーランドでは輸入時期の関係から、足掛け3年で第4シーズンまできたのだが、それでも自分がいかに長く海外に居るか、居ついてしまったか、を思い出させてくれる。このシリーズがNZで放送を始めたのは、僕がウェブサイトを立ち上げた時期と重なる。少し感慨深かったり。

 さてさて、第3シーズンのフィナーレエピソードが衝撃のクリフハンガー(前後編エピソード。特にシーズン最終話を前編とし、視聴者を半年後の後編まで焦らしまくるというイヤーな手法)となったわけだが、後編であるハズの第4シーズン第1話は、テンションの高い完結編を期待して観ると、拍子抜けしてしまう。渦中の人であったリンジーは何事も無かったかのように振舞い、事務所の扱う事件も前シーズンとは何の関係の無いもの。逆に変な話だが、シーズン間の実時間と同様、ドラマ内でもある程度の時間が経っているのだ。これに馴れるまで少し戸惑ったが、第3シーズンフィナーレの事件は、まだまだこれからエピソードを重ねて膨らんでゆくことになる。

 典型的なクオリティドラマシリーズではシリーズに連続性を持たせるため、1話完結のエピソードとは別に、例えばキャラクターどうしの恋愛といった、中長期展開の見込めるストーリーを縦糸として織り込む。本作品では第3シーズンフィナーレでクライマックスを迎えたこの事件を縦糸に使っていて、その伏線は第1シーズンから現れている。まあ当時はっきり伏線となるとして製作されたのかは疑問だが、これは少し前に放送された スティーブン ボチコ の法廷ドラマシリーズ “マーダー・ワン”を思い出させる。マーダー・ワンは他のクオリティドラマと違い、たったひとつの大裁判をメインプロットとして1シーズン連続して放送したのだが、結果としてストーリーが複雑になり長すぎたため視聴者がついてゆけず、失敗に終った。ケリーはこれを踏まえて、大事件をメインではなく時折現れるサブプロットとして使い、視聴者の好奇心の糸を引っ張ってゆくのだろう。

 盛り上がったプロットをばっさりと中断したためか、新シーズン全体の「色」も、前シーズンからかなり変わったように見える。作品全体のトーンがかなり落ちつき、ドライになったようだ。前シーズンは熱血な盛り上がりのせいで画面の印象もかなりスティーミーな印象を与えていたが、今シーズンは水っぽさが消えて、替わりに金属のような赤みがかった硬さがある(……実を言えば画面のフィルタが寒色系から暖色系に変わったんじゃないかと疑ってるんだけど、ちょっとテクニカルなコトには自信が無いんで、比喩表現で誤魔化してるんです。すんません)。セリフもストーリー展開もバサバサとしていて、突き放したような印象を与える。

 その印象を更に強くしているのが、今回からエンディングに現れるようになった、"The Practice" の文字(ページトップの画像)。今シーズンは(今までのところ)各エピソードが素直な裁判勝訴で終わることは少なく、裁判後に大転換と、それに伴うキャラクターの苦悩がくることが多い。そんなラストに現れるこの文字はそのまま、"Practice" の無情な厳しさを深く心に刻み付けてくれる。中学校の英語では「練習」程度にしか習わなかったこの単語。実際はすごく複雑な意味で、開業した医者や弁護士のキャリアといった意味や、物事をどう実践していくか、といった意味合いもある。敢えて言うなら「業」というか……ほら、「なりわい」とも「ごう」とも「わざ」とも意味がとれる……。

リンジー&ボビー

 最後に、今シーズン何が一番変わったといって、リンジーほど変わったものは無いだろう。大事件の後という設定のためだろうか、痩せて、髪の色も化粧も変わって、……ムチャクチャ美人になった。いや今までのリンジー(演じるのはケリー ウィリアムス)は、一般には美人だと言われていたものの、個人的にはどうも丸っこいし化粧っけ無いし田舎臭くて、ヘレン(ララ フリン ボイル)に比べて見劣りするなあ、てなものだった。ところが今シーズンに入って突然、暖色系のスクリーンに映る彼女は艶かしいような美しさを持つようになった。これは、一見の価値ありだ。対するララ様も髪型変えたけど、オバハンぽく無くなったはいいが今度はアンバランスな骨々しさが目立つようになってしまい、ちょっと残念。

ONLINE: 00.06.27.

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The Vogelman Case Impression
ヴォーグルマン事件について


 注:全話視聴後の批評です。激しくネタバレの可能性大! 日本で観てる方はまだ読まないが吉。

 どうしたもんか。本作品最大の連続プロットで、第3シーズンフィナーレで盛り上がりまくった「ヴォーグルマン事件」。前のコラムで、第4シーズン以降もエピソードを重ねて膨らんでゆくと書いたけれど、かなり早期に決着がついてしまった。そして、僕はそれが気に食わない。

 第4シーズンが始まってからのヴォーグルマンの扱いは、視聴者が最も気になるストーリーであるのに、最後までサブプロットとして連続登場という実に中途半端なものだった。ウェイトがそれほど重くなく、メインプロットのほうにも気がいってしまう。ましてや視聴者が望むのは完結編となるべき最後の盛り上がりである。ヴォーグルマンのプロットオンリーで2,3話潰してほしかった。

 やはり問題なのは、第3シーズン半ばのエピソード以降、これが「法廷事件」でなくなってしまった点だろう。法廷シーンが全てである本作品において、このヴォーグルマン事件は、ドラマチックでソーピッシュな、恋愛と突飛な犯罪の物語に「堕ちてしまった」と僕は見る。法廷以外でどんなに盛り上げても、どうも感じ入るところが少ないのだ。事実法廷で無いからこそ、メインプロットにあがることが出来なかったと言える。最後のオチのつけかたも、どうしようもなくドラマチックであざとい感じ。その割には次回のエピソードに影響が小さすぎるし。

 第4シーズン以降のヴォーグルマン事件のプロットは、連続のストーリーとして、練り込み不足であったと言わざるを得ない。“マーダー・ワン”は連続ストーリーをメインプロットにして失敗したが、サブプロットにした“ザ・プラクティス”も、ストーリーとしては失敗だったようだ。難しいさじ加減だと思う。

ONLINE: 00.06.27.

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Episode #61 "Legacy", #62 "Oz"
第61話 『かつての栄光』 第62話 『オズ』

     ボビーの師であり、かつては超一流の弁護を誇った老弁護士 レイモンド オズ。しかし老いは彼の過去の栄光を犯し、歪めていった。数十年来の妻が財産を奪おうとしていると主張するオズはボビーに弁護を依頼するが、そこに見たのは、彼の痴呆の症状だった     

 ヴォーグルマン事件が終息して、久々に集中力と見ごたえのある前後編エピソードとなった。しかし、どうも一歩決め手に欠ける、歯がゆい印象を残す。

苦悩のオズ

 素晴らしいのは前編だと思う。オズの事件の導入&展開編に加え、サブプロットとしてダメ弁護士のストーリーが入るのだが、老人を描くことで常に辛く哀しげな展開をするメインプロットにコミカルなサブプロットが中和剤として働いている。そして終盤では両プロットにショッキングな転換があり、ふたつのストーリーは明確にひとつのテーマ、「レガシー」へと収束し、各キャラクターの哀しくも美しい絵によってエピソードの幕が閉じる。ストーリー的には「後編に続く」だが、このエンディングでじゅうぶんカタルシスを得られるエピソードだったと思う。

 こうして美しく展開したストーリー、ところが後編になると非常に切れが悪くなる。後編は基本的に前編が法廷の内外での言葉の駆け引きで、その描写じたいはまさに「プラクティス節」といった感じの、インパクトのあるものだ。演出のテンションはいつもどおりの高さなのに、ところが裁判編の展開そのものは、逆にストレート過ぎて面白みに欠ける。まさかこんな新戦術が! こんな判決が! といった風にはならないのだ。前編と同様後編のラストショットも、オズの苦悩を絵に見せる美しいもので、なるほどこのエンディングを見せる為にあえて素直な判決なのか、とも思えるけれど、逆に絵に頼ってストーリーを軽んじたかな、とも勘ぐりたくなる。その程度の安直さだ。

ヘレンvsオズ

 繰り返すが裁判シーンはいつもどおり、熱が入って面白い。まさに老練といった感じのオズの独特の自己弁護、彼を追及するヘレンの厳しすぎる口調、そしてそれに答えて我を失いかけるオズ……。それらを表現する魅力的な表情・アクションを綺麗におさめた絵を、何度も観ることが出来た。もうひとつ面白いのが、ヘレンの同僚検事であるリチャード ベイの存在だ。その言動は矮小で、外見もチビでハゲかかりというひどくイヤな男として描かれるが、彼の裁判に対する考え方……法廷をゲームか芸術の一種とみなす……は、ヘレンの熱血ぶりからすれば外道だろうけど、独特の魅力を感じる。熱血ぞろいのプラクティスのなかで明確に毛色の違うこのキャラ。裁判シーンで良いアクセントになっていると思う。

放送: 99. 11. 17. / 99. 11. 24 (第4シーズン)
脚本:David E. Kelley / Todd Ellis Kessler / Jill Goldsmith
監督:Dennie Gordon / Michael Zinberg

ONLINE: 00.06.29.

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