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Mercy Point
マーシーポイント
Mercy Point


遠未来の宇宙ステーションを舞台に、医師たちがテクノロジーを駆使して様々な病気に立ち向かって行くという、「医療」がテーマのSF作品。ある意味非常に独創的で好奇心をそそる内容だが、視点を変えれば「スタートレック:ディープスペースナイン + ER」という、テレビならではの安直なアイディアにも思える。可能性を秘めたドラマと色物作品のはざまにあったが、その結果は2週で打ち切り決定という悲惨なものだった。
作品の基本設定は snbmp_01.html



Overall Impression
作品の印象

 「勿体無い」という言葉を、何度使えば良いのかと思う。

 海外ドラマを知ってからこの5年間、10シリーズ以上のテレビSF(Sci-Fi)を観てきたけど、どれもこれも、みな押しなべて「勿体無い」。どのシリーズも素晴らしい可能性とアイディアを秘めていたのに、なにかが、足りない。そしてそれらシリーズの多くが、その足りない何かを足す前に、打ちきられて終わっている。

マーシーポイント
 マーシーポイントを2年前はじめて雑誌で知ったとき、なんじゃそりゃ安直な、いくら ER が面白いからってそれを宇宙でやるこたねえだろ、と思った。そしてその次の号で、番組の2週間での打ち切り(実際は7週間放送されたが)を知って、そりゃそうだ、と納得したものだった。それがいま、2000年5月、ニュージーランドの土曜の昼間の穴埋めプログラムとして放送されているのを観て、驚いた。これ、もの凄く魅力的な設定じゃないか。

 SFは実は医療ネタの宝庫だ。ナノマシン、クローニング、異星のウィルス、未知の物質や放射線の影響、意識のダウンロード、テレパシー、サイボーグ化、遺伝子書き換え、クライオニクスにステイシスフィールドも……、オーセンティックな小説ネタから見た目優先のテレビネタ、あるいは現実世界で既に使われている技術まで、医療に直接関係したアイディアやガジェットを拾えばキリが無い。まあ、なんでもかんでも医療に結びつけることができるともいえるけど、これだけネタがあればテレビSFのシリーズの構成で、ネタに困ることは無い。

 こういったSFならではの設定を使って、魅力的で独創性・意外性のある医療シーンを描き出し、そのうえERやシカゴホープと同じように、生命というヘヴィなテーマを正面から扱うことで感動を引き起こすことができるのなら、それは「テレビSFシリーズ」として、ある意味理想的なものになってたんじゃないかと思う。コアな支持層を持つSFと、広く受け入れられるヒューマンドラマの融合。異星人がほいぽい登場するテレビSFでは多用される「人間と異星人との思考の差からくる問題」というアイディアも、生命倫理、生と死という究極問題を中心に置くことで、力強く表現されたはずだ。

 ところが、そうはならなかった。最初の2回の低視聴率で番組は放送局から見離された。いや確かに、打ちきられても仕方ないものだったかもしれない。放送されたエピソードは、結局スタートレック:TNG(の全盛期)のようなSF的感動にも、ERのようなスピード感あふれる原始的な感動にも及ばない、どっちつかずの小さな作品だった。やっぱり、新しいSFを創ると言う志より「スタトレ+ER」という安直さが表に出てしまった結果なのか。でも、あと少しでもシリーズを存続できたら、要領を得た製作者によって番組方針の化学式がうまく働き、本当に素晴らしいエピソードが展開されたかもしれないのだ。

地球
 なによりいちSFファンとして悔しいのは、作品のアレコレよりも、これから展開されたであろう、ひとつの新しい宇宙が潰されてしまったことだ。右の写真を見て欲しい。オープニングでチラっと出る地球の様子だけど、これだけで僕はすごくワクワクする。この宇宙で、23世紀の地球はどうなってるんだろう? コロニーの生活は? 超光速移動の手段は? 銀河政治情勢、異星との外交、戦争、サハルティック境界の謎……、あらゆる可能性をもった目新しい宇宙が、マーシーポイントの医療現場を通じて描かれるはずだったのに、それが観られないなんて!

 勿体無い、勿体無い。


 最後に蛇足のツッコミ。舞台となるステーションの意匠は変だ。遠心重力を使ってるわけでもないのに回転してるんだけど(律儀に2ブロックがそれぞれ逆回転)、それが上から観ると十字の形になる(タイトル写真)って、21世紀でさえ宗教的な理由から廃れつつある病院の十字マークが、23世紀でも続くかあ? この辺からしてツメが甘いから、根性足りなくて打ちきりになるのだ。




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