ONLINE: 000716
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Michael Moore: Awful Truth
マイケル ムーア の「悲惨な真実」
awful truth


映画監督 マイケル ムーア がテレビ民主主義人民共和国(PDRTV)の旗のもと、毎回々々世間に問題にされているところ(或いは問題にされていないところ)にアポ無しで無理矢理リポーターを送り込み、情況をストレートかつ強烈に皮肉った取材をし、デタラメなドキュメンタリやインチキキャンペーンを仕立て上げたりする。社会風刺に特化した「電波少年」と言えるところもある。



Overall Impression
全体の印象

 英米のお笑い番組のなかには、「観る」というより「たしなむ」という言葉のほうががぴったりくるようなモノがいくつかあると、僕は思う。その筆頭が、イギリス製の大人向けのしっとりしたシチュエーションコメディ。ヤングアダルトに向けた派手さはなく、かといって高齢者向けのベタつきもなく、イギリスの30台から40台を相手にしたシチュエーションコメディは、なんとも言えない味がある。

マイケル ムーア

 アメリカ製のお笑い番組で僕が「たしなむ」と言えるのは、この政治風刺お笑いショウ、マイケル ムーアだ。主流のシチュエーション・コメディやスケッチ・コメディ(コント)番組とは当然ながらかなり笑いの取り方が違い、シリアスな社会問題をとことん馬鹿にしまくる……と書けば一瞬 イギリス流か? とも思えるけど、観ればこれが確かにアメリカの笑いのセンスであることがはっきりする。そのやり口はもっとスケールがでかいくて、テンションをキープしてゴリゴリ押してくる。ある意味主流派コメディに含まれる社会風刺ギャグのエキスを濃縮したようにも思える。アメリカ流のヒネクレかえった知性の表し方、そしてその味わい方を、身につけておくのは悪くない。

 で、番組の内容だけど、「たしなむ」だけあってどういう笑いのセンスを持っているのかある程度知ってしまえば、あとは別に集中して番組を見なくても、テレビガイドの簡単な紹介を読むだけで、じゅうぶん観た気になって楽しめてしまったりする。例としてすこし翻訳してみよう。

「ぼくらの兵器査察官」      マイクはふたりのイラク系移民のタクシー運転手を兵器査察チームにしたてあげ、多数の核兵器と化学兵器が貯蔵されていると疑われる、ワシントン州に送ることにした。

「青少年スナイパー学校」      子供が学校でセミオートマチックのマシンガンを乱射しふたりを殺害したと聞いたマイクは、命中率の悪さに怒って子供向けの射撃訓練学校を設立することにした。

「アメリカン・アパルトヘイト」       マイクは南アフリカの白人たちを相手に、いまだ白人の優位と黒人への差別をエンジョイできる、アメリカへの移民宣伝キャンペーンを始めることにした。

 こんな感じで、アメリカ社会・政治・経済に対する、もうコテッコテに濃いいジョークが続く。「青少年スナイパー学校」は、学校の架空のプロモーション番組という設定で、子供達にサブマシンガンを持たせて笑顔で射撃訓練させ、最後にスナイパー学校内のいじめられっこが生徒先生を全員射殺するという、ある意味コレ以上無いほどベタベタなオチがつく。「アメリカン・アパルトヘイト」は、いかにアメリカの白人が“巧く”黒人差別をしているかを、またプロモーションビデオとして見せる。『アメリカでは白人達がラップなどの差別階級音楽をわざと好むフリをして、黒人たちに一定の安心感を与え……』

 全編なんというか、どこまでもどこまでも落ちてゆく感じ。さすがにプライムタイムにネットワークで流れるようなものじゃないけれど、強い背徳の風味は馴れるとけっこうクセになる、お笑い番組だ。


(筆者視聴時間数:5時間前後)

ONLINE: '00.07.16.




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