ONLINE: 000415
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Law & Order
ロー & オーダー
Law & Order


 『刑事法大系に於いて、人々は2つの異なる、しかし等しく重要な団体によって代表される。犯罪を捜査する警察、そして容疑者を起訴する検察である』 ……オープニングナレーションより。
 ディック ウォルフ制作による、ニューヨークを舞台にした 警察/法廷ドラマ。基本的に完全な1話完結のストーリーで、冒頭で死体が発見され、前半は刑事による犯人捜査と逮捕、後半は検事たちの立件と裁判による事件の真相追及を描く。メインキャラクターの人生を描くといったソープ色は殆ど見られず、事件のみに執着したハードボイルドで渋い作り。言い替えれば地味だが、常に高品位な内容で10年に及ぶロングラン作品となり、視聴率で ER に次ぐ、人気ドラマの地位を築いた。日本には未紹介。



Episode #166 "Ritual"
第166話 『儀式』

 ロー&オーダー で印象に残るのは、どうも性犯罪関連が多いような気がする。今回のエピソードも、直接的な性犯罪ではないけど、かなり複雑、そして難しいテーマ。文化対立と親権問題を描く。

     テロリスト犯罪かと思われたアラブ人の死は、裕福なエジプト移民の妻とアメリカ人の夫の対立によるものだった。検察が立件した容疑者である夫は、11歳の一人娘を割礼から守るために殺人を犯したのだ。彼を検挙した為、アメリカの習慣からすれば明らかな非人道行為を擁護する立場に陥った検察当局。そして少女の運命は     

 女性の割礼は、中東からアフリカにいまでもある習慣。これは結婚まで女性の処女性・貞節を護るために、少女のうちにクリトリスを除去するというもの。作中ではクリトリスそのものを削除すると言ってるみたいだったけど、僕の記憶ではもっとおおざっぱに大陰唇あたりを傷つける行為だったような……まあ多分作品が正しいでしょう。これだけヘヴィなネタだと、相当注意して扱わなければならないはず。事実、裁判シーンでは文化人類学者を証人に立たせているし、「宗教ではなく純粋な文化的習慣」とハッキリ言いきる場面も見られる。これはキリスト教系アメリカ人のイスラム教に対する無用な誤解を増幅させないために意識されてるんだと思う。

 それでも、もし自分がエジプト人だったら相当イヤな気分になるだろうなあ、というセリフも多い。日本もこうやってアメリカドラマで扱われる事が多いんだけど、観てるとどうしても、「あいつら、こっちのことを野蛮人だと思ってるんじゃないか?」と思ってしまうのだ。それは自意識過剰の被害者妄想かもしれない。少なくともこういった高品位な社会派ドラマを作る製作者側に、そういった意識は無いはずだ。そして、彼らが真に問題にしたいのは、異文化に対峙することとなってしまった、アメリカ側の苦悩だろう。エンディング近くに、エジプト人祖母のこんなセリフがある。「自由の国アメリカと言うけど、テレビを見ても新聞を見ても、セックス、セックス、セックスばかり! 子供の妊娠が当たり前! 誰が娘を護るの!?」 ここ、ポイント高いと思う。割礼を非人道的とするアメリカの倫理は、手痛い一撃を受けることになる。

 作品では審判は家庭裁判所(アメリカの家裁! はじめて本格的な描写を見たけど、日本とは違い本当に家族争議のみを扱うところみたい)に持ち込まれ、最終的には父親が娘を母親から奪い去るという結果になる。このシリーズお得意の、心苦しいエンディングだ。テーマが巨大であるだけに、描き切れていないんじゃないかと思える点も多く見える。例えば民族の文化・習慣の差を乗り越えて結婚したはずのふたりが、結局文化の差を巡って決別してしまう心境などもしっかり観たかったんだけど、本作では省略されていた。

 そういった省略された部分を含めて、作品の内容、そして作品そのものの方向性と、複数の次元で考えるところの多いエピソードだった。じゅうぶん、もとはとれたと思う。なにしろ、考えさせる為のドラマなんだから。

 ところで、前半の捜査シーンで、テロリスト犯罪を考慮した刑事が、フル装備でライフル銃を構えた兵士を従えて公道を歩くシーンがあった。かなりカッコいいけど、あんなもんが実際にありうる社会つうのは、つくづく恐ろしいとも。

放送: 97. 12. 17. (第8シーズン)
脚本:Kathy McCormick, Richard Sweren
監督:Brian Mertes

ONLINE: 00.04.15.




Episode #169 "Castoff"
第169話 『背離』

     凶弾に倒れたソーシャルワーカーの女性には、特異な性愛への執着があった。更に女装した中年男性が自室のベッドで発見され、共通のセックスパートナーに容疑が固まる。異常なセックスに溺れた彼は、更なる快楽のためにパートナーを次々と殺してまわっていたのだ。第1級殺人に問う検察の前に立ちはだかったのは、自分の理論を確かめるためにあえて殺人鬼を弁護する法学者だった     

 ロー&オーダーの前半、捜査する刑事たちが主役となるパートでは、刑事たちの個人問題の描写などが押さえられている分、捜査の手法・技術といった、専門的な部分がよくクローズアップされる。このドラマシリーズ、一時期は検死する医師がレギュラー扱いになってたぐらいで、死体の解剖や弾痕の調査、自動車の傷の調査と、警察の中にあるさまざまなプロフェッショナルとその手法を観ることが出来る。おなじニューヨークの警察署を舞台に指定ながら、NYPDブルー の捜査シーンではなかなか観られない描写で興味深い。まあ NYPDブルー はスラム街の貧乏署が舞台で、焦点となる犯罪の質も違うんだけど。

 今回のエピソードで出てきたのは、乱交パーティを撮ったビデオのスチルから部屋の位置を割り出す映像専門化。ちなみに "One Police Plaza, Criminology Department" というところにあるらしいが、ホントの住所かな? 彼は画像解析ソフトと手製の図を使って、窓の外から観えるビルの角度やカメラの位置を計算し、ビルの何階で撮られたかまで推定する。こういった専門的な描写がキチンと描けてるから、ドラマにぐーっとリアリティが出るし、捜査の描写に面白さがでると思う。

 さて、後半の裁判パートだけど、今回は真の動機や真犯人が暴かれたりするわけではない。全く別のトピックが絡んでくる。「犯罪とテレビの暴力描写の関連性」という、まあ唐突だが大きな問題である。死刑はほぼ確実の被告に、有名な法学者が弁護を名乗り出て自分の理論を展開する。ロー&オーダーの裁判シーンは、最終弁論より証人喚問中の感情的な盛り上がりがヤマとなることが多いが、今回はかなり政治的なトピックを持ってきただけあって、最終弁論シーンに時間がさかれ弁護士どうしの筋のある弁論が展開される、なかなか見ごたえのあるものとなっていた。

 ひとつの決まったフォーマット・パターンを持つドラマだが、エピソードによってここまで中身が違ってくる。実に奥の深いスタイルだと思う。

放送: 98. 01. 28. (第8シーズン)
脚本:David Black, Harold Schecter
監督:Gloria Muzio

ONLINE: 00.04.27.




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