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フローテーション(感覚遮断)タンク | 虚空 Akasha

フローテーション(感覚遮断)タンク

フローテーション(感覚遮断)タンクについて知ったのはかれこれ14年ほど前のこと。立花隆さんが月刊誌の『文藝春秋』に連載していた「臨死体験」が同名の本として出版され(文藝春秋、1994年)、そこで彼がフローテーション(感覚遮断)タンクに入ったときの体験談を読んだからだ。彼がした体験のなかでも特に興味を惹かれたのは、身体感覚が完全に消滅して純粋意識だけになったことだが、人の意識に興味があった私はそれによって好奇心が一段とかきたてられた。

その後はタンクが私の至近距離になかったこともあってタンクのことはほとんど忘れていたが、昨年の11月にたまたま私のヨーガの先生がクライストチャーチ市内にあるタンクに入ったという話をしてくれたのがきっかけになって、さっそく試してみた。結果は「これはすごい機械、またやってみたい、ぜひ夫にも勧めたい」。そこで夫にやんわりながらもしつこく勧めると、「じゃあやってみるか」といってくれた。そしてその結果は私と同じ「またやってみたい」。

クライストチャーチにあるフローテーション(感覚遮断)タンクの経営者はジョイ・ホッドソン(Joy Hodson)さんだが、彼女の名前が示唆するように、タンクの初体験は私たちにとってとても楽しいものだった。

フローテーション(感覚遮断)タンクって何?

タンクはシングルベッドと同じような大きさのタンクで、そこには約25センチほどの深さの人の体温と同じ温度に設定されたお湯が入っている。お湯はエプソム塩(にがり成分のマグネシウム)が大量に溶けているので、裸になって入ると体重の重たい人でも簡単に浮かぶことができる。タンクによってデザインは異なるが、基本的な構造はどれも同じだ。
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写真を見るとわかるようにタンク中部には出入り用の蓋があり、それを閉じるとタンク内部は音や光といった外界の刺激は遮断されて、完全な静寂と暗闇の世界になる。そのことからタンクは、感覚遮断タンクまたは隔離タンクとも呼ばれている。

ところで初心者や閉所恐怖症や孤独を恐れる人の場合、恐れる必要はまったくない。というのもタンクの蓋の開閉は自分でするので、蓋を開けたままにしておくこともできる。また必要とあればリラックスするための音楽もかけてくれるので、しばらくすると心地よい眠りに陥る人もいる。

タンクを用いた感覚遮断についての研究は1950年初頭から行われているが、その研究の推進役となったのはイルカと人間の脳と意識の研究で世界的に有名な米国の精神医学者ジョン C. リリー(1910-2001)で、彼は独自のタンクを開発し自ら被験者となって多くの実験を重ねた。70年代後半にはリリーのデザインしたタンクはグレン・ペリーによってさらに改良され、サマーディタンクという名前のタンクとして商品化され一般の人々が利用できるものになった。

タンクが人の身体と精神に与えるさまざまな影響については今日でも研究が続けられているが、タンクは英語でREST(Restricted Environmental Stimulation Therapy、環境刺激制限療法と訳せばよいのか)と呼ばれる治療法として、医学界ですでに確立されている。

たとえば世界最大の精神保健研究所である米国の国立精神衛生研究所のヘンリー・アダムズ博士は、こう述べている。「最も重要なのは、フローテーションタンクは仮説に基づいた研究所における現象ではなく、有効性があると証明されたテクノロジーである」。

タンクの効果

八十年代には日本にはタンクが20ほどあったようだが、現在は光と音が完全に遮断されるタンクは東京にただ一カ所あるだけ。ちなみにネットで調べてみると、たとえば米国では83カ所、英国では32カ所あった。そのこともあって日本語でタンクの検索をしてもあまり多くの情報は入らないが、英語で検索すると多くのことがわかる。タンクの効果については次のようなものがあげられている。

ストレス解消とリラックス、自己啓発と体重減少、妊娠による身体のストレス解消、鎮痛、学力向上、科学的研究、スポーツ競技の結果向上とスポーツ選手のためのリハビリ、美容、ビジネス、創造力、感情に関する問題とうつ病、自然治癒力と免疫力。

タンクの効果についてはクライストチャーチのジョイさんにも聞いてみた。

「わたしがタンクに初めて浮かんだのは17年前のこと。今では週に3回、30分ほど浮かんでいます。タンクは思考の明確さと幸福をもたらしてくれました。第三の目が活性化し、眼球の白い部分がさらに白くなりました。特にこれといった運動はしていませんが、体はひきしまり、皮膚もしまり、顔のしわが少なくなりました。夜は悩んだりすることなくぐっすり眠れますし、痛めたアキレス腱は医師による治療を受けることなくたいぶよくなりました」。

彼女の話を聞くまでもなく私にはタンクの効果がよくわかる。一度試しただけにもかかわらずだが、タンクにただ浮かんでいるだけで得られる心身の深いリラックスがいかに多くの効果をもたらすか、疑問の余地はない。また深いリラックスによって至福感を体験すればそれが人生に好影響をもたらすだろうし、外部からの刺激が完全に遮断された環境に一人でいることによって、自然と自分の心の動きやあり方がとてもはっきりと見えるようになる。するとその結果、注意力や気づきや観察眼といった力も高まるようになるだろう。

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どのようにして浮かぶの?

日本にはすでに述べたようにタンクは一カ所しかないので、試したいと思っても試すことができない人が多いだろうが、ともあれ私がタンクの体験を通して学んだのはこんなことだ。

問題を解決するためにタンクに入る場合は、問題が解決したときの様子をありありと視覚化するヴィジュアライゼイションのテクニックを使うとよいだろう。ただしそのテクニックについて私が個人的に思うのは、エゴを満たすための手段にしてはならないということだ。

または問題解決のためにタンクに入っても、問題にとらわれずにただタンクに浮かび、可能な限り心身をリラックスさせることが重要だ。タンク内では問題がより鮮明化されるから、それによって感情や肉体的センセーションが強烈になる傾向があるが、パニックに陥る必要はまったくない。なぜならそれはあくまでも一時的な現象であり、遅かれ早かれ現象は自然に消えていくからだ。そしてそれがすなわち問題の解決になる。

特にこれといった問題がなくタンクに入る場合でも、基本は全く同じだ。タンク内では深層意識に隠れているものが表面意識へと浮かびあがりやすくなるが、それもただじっと見ているだけで自然に消えていく。もちろんこのような純粋観察はタンクに限らずいつでもどこでもできるわけだが、タンクではそれがしやすくなるだろう。

タンク利用にさいしての注意点

1.フローテーションタンクは治療法の一つであり、すべての治療法がそうであるようにすべての人に適したものではない。
2.フローテーションタンクはあくまでも機械であり、機械をコントロールするのは人である。またすべての機械がそうであるように正しい利用のし方がある。

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